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舘 翼 「深層学習による背景画像の自動生成」
近年、深層学習(ディープラーニング、Deep Learning)と呼ばれる技術が、画像認識や囲碁の対局など、いろいろな分野において、注目されている。また、画像の分野では、画像の認識だけでなく、画像の生成も注目されている。
本研究では、深層学習の画像生成技術を用いた、ディジタルコンテンツの背景画像の生成を行った。背景画像の生成をする画像生成器は、約2万枚の写真画像を用いて、画像生成器を学習させ、生成した。その画像生成器から生成される画像は、ユーザが指定した感性語を用いて補正した画像が生成される。今回はもの悲しいという感性語を反映した画像の生成を可能とした。今後は、もの悲しいという感性語以外の完成後においても、画像生成を可能にしていきたい。
根本 裕太 「深層学習による単語の分散表現の合成」
深層学習のモデルの1つである再帰自己符号化器を用いて、単語の分散表現を合成し、日本語の言い換え表現認識の問題において、実験を行うための実装案を提案する。
Socherらの手法では、文の構成木に基づき、子ノードからボトムアップ式に計算することで、単語列が持つ意味的な情報をベクトルで表現することが可能である。単語列ベクトルは構文木に基づいて構成されているため、構文的な情報までも表現している。構文木の根のベクトルは文に含まれるすべての単語を連結させた単語列、すなわち分そのものを表すベクトルである。
再帰自動符号化器では二分木に基づいてベクトル合成を行う。英語は句構造規則に基づく二分木により表現されているため、構文木に従い合成を行えばよいが、日本語の係り受け構造では1つの文節に複数の文節が係るため、単純な二分木とはならない。そこで本研究では、日本語の係り受け構造を二分木に変換し、ベクトルの合成を行った。
柏木 直人 「災害時に使える災害情報共有プラットフォームサイトの構築の考察ついて」
日本では最近、大きな災害が多い。その際に一般人の災害ボランティアが活躍しているが、一時的なものでありボランティアは人数不足になる。不足の要因には情報不足もあるが、 情報提供側のWebサイト運営者の問題点には技術者人員不足、情報取得人員不足がある。 この問題点を解決するため、ボランティアの人員や地元の住民にも協力してもらい作り上げるGoogleMApを活用した情報共有プラットフォー ムサイトを考察している。
方法としては、現場の写真などの視覚的な情報と写真に付随させたGPS情報を使用しマップ上に自動反映させ表示させる。現段階では災害ボランティアに参加経験のある人を対象に実際に災害とは別のテーマで体験してもらいその後ユーザビリティ評価アンケートを実施し、災害時に活用を検討出来るようシステムの向上を図る。
田中 孔亮 「顔文字とテキストマイニングによる感情値の算出」
平成14年度の卒業研究で感情値を出す為に用いられた単純感情極性対応表は 1つ1つの単語ごとの感情値しか載っておらず、いくつもの単語で構成される 文章の感情値を出すには語ごとの感情値を足しても妥当な感情値を算出するこ とが難しいという欠点がある。
本研究では、妥当な感情値を算出する為に様々な計算方法を提案し、さらに Twitterで使われている様々な感情を表現している顔文字と文章を関連付けて 顔文字と文章の感情値が一致しているのかどうかを確認する実験を行い、結果 として文章の感情値が妥当であることを確認して、より正確な文章の感情値を 算出することを試みた。
また、算出した顔文字の感情値から単純感情極性対応表には載っていない感動詞 の感情値を推測した。
鶴谷 啓 「メールの自動要約生成」
スマートフォンでメールを受信した際に表示される通知欄に、メールの要約を表示したいと考えた。 通知欄には表示できる文字数が135文字以下と制限があるので、 それに合わせて要約を表示することで、 より簡単にメールの概要を把握することができる。 既存の自動要約には、新聞記事や論文などを対象にしたものがあるが、 メールを対象にしたものはなく、 メールにはそれらの文書と比べて読み手が限定されているなどの性質の違いや、 独特の文章構成があるため、既存の方法では要約の精度が低くなってしまう。
本研究では、文とそのメールの件名との関係などメールに特有の手がかりを用いることで、 既存の手がかりを用いた場合より要約の精度を上げることを試みた。
西谷 舞 「短い文章に対する助詞を用いた著者判別について」
本論文では、文字数が少ない文章について著者判別を試みる際に有効な手法を提案し、 まとめたものである。著者不明の文書、著者の真贋があいまいな文書に対して、 統計的、計量的に文体的特徴を抽出しその著者を推定するといった研究は古くから されている。しかしそれらの研究は、学習データの文章の文字数が多いことが前提で あり、近年発展しているTwitterや掲示板といったSNSには適さないことが多い。 そこで本論文では文章が短くても特徴が表れやすいとされている助詞の分布と、従来 の手法を組み合わせて著者判別を行った。 実験は国立情報学研究所から提供されているYahoo!知恵袋のデータを用いて行った。 まず短い文章について、従来の手法のみで著者判別を行い、次に助詞の分布を組み合 わせ実験を行った。結果、後者の実験の方が著者判別の正答率が上昇し、助詞の分布 は短い文章に対する著者判別に有効であることがわかった。
羽方 慶 「質問応答システムの新手法の提案」
近年、質問をユーザから自然言語で受けつけ、その解答を返す質問応答システムの研究が盛んに行われている。 解答の生成方法としてインターネット上の情報から回答を生成する方法があるが、検索で得られる情報のポイントが 多岐にわたることや質もさまざまであることから、質問者が望んでいる解答を導き出すのが困難である。 本研究では共起語(あるキーワードが文章中に出た時に、その文章で頻繁に用いられる語)を用いることでポイントが 多岐という問題に対応できるはずと考え、解答を生成する方法を提案した。
畑岡 昌宏 「回帰分析と時系列分析による気象データの分析と予測」
時間の経過とともに変動する現象の記録を時系列または時系列データと呼び、 これを分析することを時系列解析という。 多変量解析のうち因果関係や相互依存関係を解析するために用いる手法を回帰分析という。 回帰分析では、ある変数の値に基づいてほかの変数を説明したり、予測することができる。
本研究では気象庁のホームページからダウンロードできる気象データを用いた。回帰分析による平均気温・最高気温・最低気温の間の予測 式を比較し平均気温と最高気温の予測式が精度が高いという結論を得た。 ARモデルを利用して未来の気温を予測し、それと実際のデータを比較した。
星野 勇太朗 「深層学習を用いた機械翻訳における精度改良手法の提案」
近年、機械翻訳手法のうち深層学習を用いたものが注目されてきている。この手法は従来の機械翻訳手法を様々な点で超える結果を出して いるが、一方で学習データセットに含まれていない未知語や低頻度語が入力されると、出力の精度が落ちるという欠点が指摘されている。本 論文では、学習段階においてアテンションによる文のアライメント手法を入力文と出力文に対して適用した結果を利用することにより、上 記問題を部分的に解決することが可能であるという結果を示した。具体的には機械翻訳の評価手法として広く用いられるBLEUスコアにおい て、ベースラインでの出力と比較して、提案手法上での出力の結果が平均して3%程度上昇した。
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阿部倉 凌 Twitter によるアクティブ顧客サポートの効果の測定
アクティブ顧客サポートとは、ブログやTwitterなど、ソーシャルメディア上で 顧客が書き込んでいる不満や疑問を検出して、企業自ら顧客に直接話しかけサポートを 行うものである。 本研究では、実際のTwitterデータを用いて、具体的には 2つのサポート方法、 1つ目はハッシュタグを顧客に積極的に利用させるやり方、 2つ目は顧客のツイートに対して固定したパターンでなく臨機応変に柔軟な返答を返すやり方について、 感謝ツイート数を比較測定した。 その結果、ハッシュタグ法では3%の感謝ツイート数の向上が、柔軟応答法では15%の向上が見られ、 有効な対応であることが検証できた。
大塚 国松 リアルタイムデータを用いたインフルエンザ流行予測
インフルエンザの流行を察知するためには、病院で検査をし、検査結果を集計するという手順が必要である。 このため流行の察知にはタイムラグが生じている。本研究ではこのタイムラグを無くすため、 Twitter や気象情報などのリアルタイムに得られるデータを用いてインフルエンザの流行予測を試みた。 Twitterでの分析においては、単語の出現頻度と患者数との相関を時系列順で求め、 気象情報での分析においては気温、湿度、気圧、風速、日照量のデータと患者数との相関を 県別かつ時系列順で求めた。 気象情報での分析では患者数は平均気温と湿度に対して高い相関が見られた。 また、Twitterでの分析では「秋」「文化」など特定の語に対して高い相関が見られ、 流行予測が可能であると考えられた。
酒井 亮佑 ブランドマネジメントにおける Twitter データの活用
ブランドマネジメントでは、消費者がどのように、対象のブランドを知覚しているかを、 把握することが重要である。 本研究は、Twitter のデータを用いて、消費者の知覚の変化の兆しを探るための 「カテゴリー・トレンドマップ」の作成を試みた。カテゴリー・トレンドマップとは、 多摩大学経営情報学部の豊田裕貴氏が、カテゴリの変化の端緒を発見するために、 アンケートを用いての考慮集合の変化を、固有値の変化から検討するために提案した手法である。 本研究では、アンケートに代えて、時系列である Twitter データを、2年分用い、 お酒に関する単語の出現頻度を主成分分析し、第一、第二主成分上で 3つのカテゴリに分類した。 その後、分けられたカテゴリ毎に主成分分析を行い、固有値を計算した。その結果、時系列によるTweetの変化を、固有値の変化から検討する Twitter 版のカテゴリー・トレンドマップを 作成することができ、マップからカテゴリ毎の変化の兆しが分った。
舘 翼 深層学習による画像認識実験
近年、深層学習(ディープラーニング Deep Learning)と呼ばれる技術が、画像や音声 などの認識において、注目されている。 深層学習を用いると、教師付き学習では、従来のあらかじめ特徴抽出法を求めていた手法 より高い認識率を示した。 また、教師なし学習に拡張した場合に興味深い高次の特徴が抽出されたという報告がある。 本研究では、手始めに深層学習の実験システムが稼動することを確認するために、 教師あり学習での認識率を実測した。具体的には、Berkeley大学の Yangqing Jiaらによる Caffe システムを、GPU を搭載した Linux システム上に移植し、画像データセット CIFAR-10を用いて、Alex Krizhevskyらが行った一般物体画像認識実験を再現し、 81.9%の認識率を得た。 更に、同システムの学習パラメータを変更して、認識率の変化を測定した。
根本 裕太 word2vecによる日本語多義語ベクトルの比較と考察
言語データの分析と応用のために自然言語処理と呼ばれる分野で、最近画期的な手法が提案された。 米グーグルの研究者であるミコロフ氏らの「word2vec」では、これまで定量的に捉えることの 難しいとされてきた言葉の「意味」を、その前後に出現する語のベクトルによって 表現していて、数値としてベクトル空間上で扱うことで、極めて直観的に表現しているかの ような性質が認められ、実際従来のアルゴリズムに対して、意味論的に55%と統語論的に59% の結果が得られている。本研究では、主に wikipedia のデータを用いて、 当手法を解説した西尾泰和氏の電子書籍によれば、弱点とされている言葉の「多義語」 の問題に対して、いくつかの多義語の意味のペアを与えることで、 その結果にどのような違いが見られるのかを調べた。
森 廉 Twitter を用いた社会感情数値化及び株価予測への応用
Twitter は多くの一般の人々の声が集められることから、金融分野などで心理学的に株価 を予測する研究がなされている。本研究では「人の感情と行動には関係性がある」ことに 注目し、Twitter を用いて社会全体の感情を測定し、株価予測が可能かを調べる。 単語にはポジティブかネガティブな意味合いが含まれている。 その意味合いの強さを数値化し、日毎の Twitter 投稿を処理することでその日の社会全体の 感情を測定する。 測定された感情と日経平均株価をグラフで比較した結果、Twitter 感情が株価変動に先行する場合と、 後から追従する場合があることが分かった。
木原 弘貴 GPGPUによる多数桁計算を用いた級数計算の並列処理
級数を使う近似計算を多数桁精度で行う場合、級数において加算する項数が増加すると計算量も増加し、また多数桁での乗除算は計算量が多くなる。そこで、本研究では多数の演算処理ユニットを持つGPGPUを用いて、多数桁での円周率を求める級数計算を並列に処理する手法を開発し、級数の高速計算を目指す。 本研究では、円周率を求めるBBP公式を選択し、並列に分割した結果十分な並列性を確保し高速な計算が実現できるかを検討する。GPGPUでは高速アクセス可能なメモリの容量が小さく、容量の大きいメモリへのデータ転送速度が限定されるため、多数桁計算でのメモリ使用量が小さい、途中結果のメモリ間移動が限定され少ないというメリットを持つBBP公式を用いて円周率計算を行う実験にて、BBP公式の処理が、多数桁計算の並列化によって約3.0倍、公式の4項をそれぞれ並列に処理することで約3.8倍の速度向上を確認した。
今井 貴大 ニュース記事のTwitter向け自動要約
国内でユーザー数が1300万人いるSNSであるTwitterは140字以内で情報を発信するというものである。そこで、ニュース記事をTwitterで発信することで、多くの人が手軽にニュースを読む事ができると考えた。
ネットに流布されるニュース記事は200字以上であり、Twitterでつぶやく為にはニュース記事を要約する必要がある。
自動要約とはプログラムを用いて、文章からその要約を作成する処理であるが、既存の自動要約は、文字数の制限に重きを置いたものは少なく、意味の維持や要約率に焦点を当てたものがほとんどであった。
本研究では、ニュース記事を140字以下に要約する仕組みの作成を試みた。
小幡 将大 アンケート調査における評価と記述欄の関連性
アンケートにおける自由記述欄は、アンケート実施者が想定していない指摘や、選択肢の内容を補強する記述を見つけるのに有効であるが、機械的な集計が難しく、十分に活用でない場合が多かった。
最近テキストマイニングの手法を用いて、自由記述の中から検出したり、選択肢項目の値との関連性を分析する方法が、用いられ始めている。
本研究では、実際のアンケートデータを用いて、5段階評価項目の値とそれに関する自由記述コメント欄の関連を分析する方法を検討した。具体的には、自由記述の中から、回答者が5段階中その評価を選んだ意図を特徴的な単語の出現頻度を見ることによって推定できるかを実験した。その結果関連性があることが分かった。
上村 聖矢 ツイートから読み取る人々の不安
本研究は、ツイートから人々の不安を分析するものである。
Twitterには多くのユーザーが存在し、140字以内でつぶやくため、簡潔で大量のデータがある。また、ツイート上では、自発的に言葉を発信するために、アンケート等では得られない信憑性のあるデータが得られると考えられる。
テキストマイニングの手法を使用して、不安がつぶやかれているツイートを探し出し、その後、すべてのツイートと不安のツイートを比較し、不安ツイートにはどのような特徴があるのか、時系列分析を行った。
その結果、不安ツイートの割合は休日より平日に高いこと、午後よりも午前に高いこと、また、2013年と2012年を比較すると2012年の不安ツイート率が高いことが顕著に見られた。
鈴木 祥之 Twitterによるエマージングトレンドの検出
SNSのTwitterには、流行りのものや新しいものに関するツイートが大量に存在するため、それらを分析することによって、新たなトレンドの検出をすることができると考えられる。それにより、世間の動向を知ることができ、生産者・消費者の素早い対応や株価の予想をすることができる。
本研究では、Twitterから得られる大量のツイートデータに対して自然言語処理を行い、単語の出現頻度や増減を計測することで、トレンドの検出を試みた。特に、世に新しく出てきた物事のみを対象にすることにより、エマージングトレンドの検出を可能にした。
この結果、「パズドラ」や「半沢直樹」といった単語の検出数の急激な増加を検出することができた。また、単語の出現数が増加したのちに、パズドラ運営会社の株価上昇や半沢直樹の視聴率上昇などが見られ、Twitterからのエマージングトレンドの検出により世間の動向、人々の興味関心の行方を知ることができた。
内藤 伸也 Twitterが人々の考えや傾向、その時間変化を見るのに有効
Twitterは個人がそのとき感じたことを自由に発信できるため、ブログや公式発表には無い感情、感覚が表れること、タイムリーに発信されるため、感情の時間変化が読み取れること、などの特徴がある。
本研究では、Twitterから時事問題である東京オリンピック招致決定について、人々の意見やその時間変化を検出できることを示す。その中から頻出語を対象に、ツイート内の共起している語のクラスターを見たい。そのため、テキストマイニングのフリーソフトであるKHCoderのクラスター分析機能、集計機能、コーディング機能を用いて、出現パターンが似通っていた単語を検出し、クラスターごとの人々の考えやツイート数の変動の検出を試みた。
その結果、カテゴリごとの時期の違いや意識の違いが分かった。
中谷 拓馬 理系作文の改良を支持するシステム作り
学生が理系の論文を書く場合において、初稿においては、文章の組み立て方や論理性など、機械的なルールが守られていない場合が多く見られる。
本研究では「理系作文の六法全書」(斎藤恭一著)に挙げられている、32個のチェック項目から、機械的に容易に判定できる13項目を取り上げ、自動チェックしてくれるプログラムを実装する事を試みた。各項目においては、単純に字数や語数を数えるものから、意味内容に関わるものまであるが、それらのうち形態素解析と、更に単語の並び方を用いた判定を工夫して、13個の判定を実現した。
過去の研究室の卒論文をテストデータとし、上記の13項目の判定及び違反箇所の指摘ができることを確かめた。
三輪 佑樹 混合分布推定プログラムのGPGPUによる並列化
近年、GPUの単精度浮動小数点演算能力はCPUのそれと比較して著しい成長を見せており、CPUを大きく上回る性能を実現している。GPUはマルチプロセッサであり、現在最新のもので2880基のコア数を持っている。他方、GPUでは、複数プロセッサである為に、ホスト側プロセッサからのデータ転送が必要でその為オーバーヘッドがあること、またGPU内のコアはホストCPUに比べてかなり性能が低いことからホストCPUとGPUの間の適当な処理命令を設計することが必要であるとの結論を得た。
昨年度の研究テーマに取上げたEM法による混合分布推定プログラムは、繰り返し計算の為に計算量が多いので、並列化をOpenMPで試みていたが十分な並列度が得られなかった。
本研究では、このプログラムを基に並列性を引き出す工夫を再検討し、GPGPU上にマップする事を目標として並列化を試みた。その結果GPGPUを用いて、GPUの持つ高い並列性を引き出せるか実験を行い、計算量の多いEMステップをGPU内で計算させることでより並列度を上げ高速化することができるか試みた。
Akif Cardak(産業総合研究所 野里研) A Study toward Automated Polyp Detection for the Screening Colonoscopy
Colorectal cancer is one of the common forms of cancer in Japan. It can be treated with screening colonoscopy in early diagnosis. However, because of increasing demands for colonoscopy examinations, there is a huge workload on physicians and hence the risk of oversights. Therefore, it is crucial issue to develop intelligent systems toward colonoscopy examination which may offer good support and guide to physicians by enabling accurate and precise polyp detection.
As a principal step toward such intelligent systems a study toward automated polyp de- tection method for screening colonoscopy images was proposed. In the proposed method, image preprocessing is performed to enhance the characteristics of polyps from normal intestinal wall with a proposed edge detection method, and to reduce the effects of specu- lar highlights which usually exist in a frame of a colonoscopy video. After preprocessing, the images are analyzed with HLAC feature extraction and PCA subspace method to make a classification. The effectiveness of the proposed method was also demonstrated by experimental results.
石川龍之介 OpenMP 上での生態系シミュレーションの並列処理の改良
OpenMP によるプログラムの並列処理を考えるとき、データ並列を前提とした for ループ
の自動並列化機能は強力でありかつ有効である。昨年度の卒業研究でテーマに取り上げた
生態系シミュレーションプログラムは、個体の発生と消滅の管理のためにリンクリスト構
造を使用しているため、自動並列化の条件の整数インデックスの増分によるループ制御が
満たされず、自動並列化できない。昨年度の卒業研究では、リストを配列にコピーし、整
数インデックスを使った for ループに作り直し、自動並列化を行った。今回は、for ループ
の自動並列化機能は使用せず、リストを予めスレッド数分のサブリストに分割し、それぞ
れをスレッドに割り当てる方法で並列化した。
結果として、並列数に応じて比例して効果を得ることができ、最大 7 並列で 6.2 倍になっ
たのを確認した。
大塚力丸 大腸菌のフローサイトメトリ測定データの解析支援システムの開発
フローサイトメトリは、細胞にレーザー光を当ててその反射により細胞の大きさ・内部
の複雑さ・及び蛍光タンパクを導入している場合その蛍光を測定する手法である。
本研究は、生物分子学科の岸本准教授の研究室で行われている大腸菌の高温適応進化の
実験で収集されているフローサイトメトリー測定データを対象に、解析手法を開発した。
解析は生物研究者がデータから現象を読み取る支援をすることを主眼に据え、測定結果の
可視化と、測定上の雑音の除去を行った。特に1時間ごとに測定されたデータをアニメー
ションとして表示し、そこから研究者が時系列としての何らかのインサイトを得られるこ
とを期待しており、この点は従来の解析では得られなかった点である。また雑音除去は、
生物研究者が雑音であるか否か確認できない状況においてさまざまなフィルタを試すこと
ができるようにした。雑音処理は、今後クラスタリングと重畳分布のパラメタ推定による
判定に繋げることを想定している。研究者は、使いやすい GUI によってデータの可視化と
アニメーション化とフィルタリングをすることが可能となっており、コードは Java を用い
て 2000 行程度のものとなった。
中井貴大 多次元配列アラインメントにおける 動的計画法の並列化
DNAやアミノ酸配列のアラインメント(位置合せ)は、バイオインフォマティクスで多用される操作の1つで、
2つの配列の位置合せには効率の良い動的プログラミングが使われている。
他方、3 本以上の配列を同時に位置合わせする場合に、動的プログラミングでは配列本数のべき乗の計算量を要し、
処理が重くなるので、一般にはツリーベース法が利用されているが正確さに欠ける。
本研究では、多数本配列の位置合せに対して、動的プログラミングを並列処理することによって高速化する手法を検討する。
よく用いられる 2 本の配列の位置合せの動的プログラミングでは、2つの配列をX方向とY方向に取った 2 次元の表として表し、その上の各点の値を左上 から順次決めてゆくことができる。このとき、前の行、前の列の値を参照するので、一般には 各点を同時並列に計算することはできない。昨年の卒業研究では、2 次元の場合に斜めの線上 に乗る点は同時に計算できることを試した。
一般に、配列の長さが長い場合には平面上に乗る点の数が増えるので、並列化による計算時間短縮が見込める。実際には、平面上の点を斜めに取り出す処理が新たに必要になるので、そのオーバーヘッドと並列化での加速分がどの程度相殺するかを、3 次元の場合についてプログラミングし、測定を試みた。
馬場貴大 配列アライメントを用いた 剽窃レポート発見システムの改良
昨年度の卒業研究で、類似しているレポートを剽窃かどうか判断するために遺伝子配列アライメント手法を用い た単語の位置合わせが有効であることが分かった。しかし、位置合せ結果を類似度評価として数値化する際に単純な合致率では類似度は高低で2極化できず、中間的な数字を示す物も多くあり、また文や文節の順番を入れ換えただけで類似判定がしづらくなる欠点があった。本研究では、それらに対する改良案を提案・評価し、サンプルでは昨年度の合致率では中間的な類似度を持つレポートが27%あったのに対し、今回の手法では12% に減少した。さらに、文や文節を入れ替えたサンプルに対して、昨年度の方法では類似度が 56%であったが、 今回の手法では 100%となって類似性を検出できるようになり、いずれも類似度の検出をより妥当・有効なものとできた。またその中でどのようなものが剽窃されたレポートであるといえるのかを考察した。
古野友也 Twitter における話題の持続性の予測 学籍番号 5509091 氏名 古野 友也
SNS の1つである Twitter は、大勢の人が発するつぶやきであるため大量に収集・分析する ことによって世間の動向、特に人々の関心の行方を覗き見ることができる。 その点に着目し、特定の話題に関するツイート数の変動を測定して関心の動向をみることが広く行われている。他方、 テキストマイニングの1手法として、アンケートなどでのポジティブ・ネガティブ(favor,unfavor)な語の出現頻度によって商品等の評価を測定することが行われている。 両手法を合わせると、Twitter のようにリアルタイムで語られるデータに対してポジティブ・ネガティブを評価し、その時系列変動によって話題の持続性を予測することが考えられる。話題の持続性を予測することができれば企業が新商品の評価を簡単に得ることができ、増産、販売停止などの意思決定を早め、利益を逃さずリスクを回避することができる。
本研究では Twitter によって得られる大量のツイートメッセージに対して自然言語解析を行い、 ネガティブ・ポジティブな意見のツイートを計測・グラフに表現することで、話題の持続性の予測を試みた。 この結果、ワンピースという話題に対してツイート数のピーク前にポジティブな単語の検出数が多く、話題に持続性があると予測されたが、実際のツイート上でその後の変動はグラフの下降を和ら げるような傾向がみられ、話題の持続性の予測が例外を除き可能であることが分かった。
山下貴司 EM 法による多重正規分布推定 プログラムの並列化
本研究では、繰り返し計算のために計算量が多く時間がかかる、EM 法による多重正規分 布推定プログラムを並列化して高速化することを試みた。
生物分子学科岸本准教授研究室の大腸菌高温適応進化実験で収集されているフローサイトメトリー測定データでは、いくつかの大腸菌クラスタが視認できるが、それを時系列で 見るとクラスタが移動する様子が視認できる。それぞれの時点の平均と分散を推定して、 移動の様子を数値化するとともに、雑音の除去の効果も期待する。
EM 法による多重正規分布の推定は、 1.k-means 法で各クラスタの重心を計算する、2. それを初期値として EM 法でクラスタリングを行う、3.AIC(赤池情報量基準)からいくつのクラスタ数が最適であるかを求める、という手順で処理を行うが、データ数が増えるにつれ計算量が増え解析に時間がかかり実用的でなくなる。そのため、OpenMP を用いて分布推定プログラムを並列化し、8 コアで実行した結果、実行速度向上が達成できた。
橋口紀敬(2012年9月卒) 学生レポートにおける 剽窃レポートの発見システムの考案
学生のレポートを読んでいると非常によく似たレポートに遭遇することがある。これらを発見し剽窃であると判断したい。文章が完全に一致していれば、剽窃レポートであると判断することは容易である。しかし実際のレポートの中にそのようなものは少ない。大抵なんらかの変化を加えてあるものが多い。その際どの程度類似していれば剽窃レポートであると判断するのか基準を設けたい。 本研究では具体的にバイオインフォマティクスの配列アラインメントを利用し単語同士の位置合わせを行い、レポート同士を比較することで、剽窃レポートを発見できるのかを検討した。具体的には Smith-Waterman 法を用い、単語同士の位置合わせを行い、その際に一致している部分を計測する。実際に提出された学生レポートに対してこの方法を利用したところ、剽窃レポートの可能 性のあるものを指摘することができることがわかった。
飯沼 章太、谷岡 敬太 話者変換における声質パラメータの制御方法
人はそれぞれ違う声を持っている。そして誰かの声を他の誰かの声にすることはとても難しい。しかしこの音声変換が出来れば医療にも役立てることができる。例えば発声器官に障害を抱えて声が出せなくなってしまった人がいたとする。その際この研究結果を用いることで、事前にある程度の録音しておいた自分の声のサンプルデータがあれば他人が発した言葉をまるで自分の声のように変換できると考えられる。
研究の手法としては元の音声と出力したい音声の線形予測(LPC)、ベクトル量子化を解析し、コードブックの重心移動(声の特徴合わせ)を行う。本研究は、他人の声の情報をどの程度まで保ったまま別の他人の声へと変換することができるかという点に重点を置いて検討した。
山内 大輔 バイオインフォマティクスにおける動的計画法の並列処理
バイオインフォマティクスの処理の中に配列アライメントの位置あわせがあり、それを計算するためのアルゴリズムとして動的計画法が利用されている。アライメント計算時間を短縮するために、並列処理を用いて計算できるようにした。その際に、スコアの計算を「ななめ」に走査するように工夫した。だが、「ななめ」に読み替える為のオーバーヘッドは通常の「縦×横」の計算より大きくなり、そのオーバーヘッドの処理は各ノードの計算よりも重くなることが予想され、並列化してもあまり並列度が上がらないと予想された。実際に並列化したところ、オーバヘッドはやむを得ないものの、配列長が長い場合には十分並列化の効果が見られた。
鳥居 諒 タンパク質立体構造予測計算の並列化
タンパク質立体構造分析は様々な方法でアプローチがなされてきた。
ホモロジーモデリング法などの統計学的データを用いる方法は近年のネットワークの発展と共に一定の評価を得てきている。
しかし、分子動力学法などを用いる方法では、その計算量の膨大さにより近年のCPUでも計算結果を出すまでに時間がかかってしまう。
本研究では、既存のタンパク質立体構造予測ソフトのプログラムをプロファイリングし、どこの関数が時間をかけているのか可視化し、そのプログラムをopenmpを使用して並列化を行い、時間の短縮をすることができるかどうかを計測する。
山田 豊 生態系シミュレーションのOpenMP による処理の並列化
並列処理は大量のデータを高速にできる技術である。これまでの並列処理は高価なスーパーコンピュータのための技術であったが、近年では、共有メモリ計算機の普及に伴い、分散メモリ環境だけでなく、共有メモリ記憶も見直されてきている。その共有メモリ用のプログラミングモデルとして、簡単に使える並列モデルを提供しているのがOpenMPである。本研究では、そのOpenMPを用いて本学生物学科の瀧本岳先生が作成された「生態系シミュレーションプログラム」を並列化することにより、どれだけ高速に処理ができるかを計測する。
結果としては、 並列部分のみの実行時間としては、スレッド数に応じて倍率もほぼ比例する結果となった。しかし、全体のプログラムとしては、期待値の8倍になることはなかった。
知久 拓生 webサイトを用いた剽窃レポートの発見システムの再構築
近年、インターネットの普及と共に、webサイトの記事をそのまま転用した剽窃レポートを、学生が提出することが増えている。特にWikipediaを代表とする、web上の百科事典や辞書のサイトは剽窃の対象となることは非常に多い。本研究では、昨年度の卒業研究での文書比較システムを元に、webサイトの記事を用いた剽窃レポートの発見機能を、より実用的なシステムとして提供できるように再構築を行ったものである。主な変更点はwebサービスとしての提供を実現し実用性を高めたこと、及び剽窃の情報源となるwebサイトを特定の百科事典、辞書サイトに絞ることでHTML解析の精度を上げたことである。
土屋 大輝 様々な最適化問題に適用できる遺伝的アルゴリズムの並列化の考え方
近年のコンピュータの発展により、並列処理を行うことのできる環境が整い、様々な処理を並列化することが求められている。しかし、正しくない方法で並列化すると、並列化の効果が全く得られない場合がある。非常に計算時間を要するため並列化が望まれる遺伝的アルゴリズムに関しても同様である。マスタースレーブモデルや島モデルなどの並列化手法が提案され、その効果が実証されているが、問題によってどう並列化し、どの並列化手法を使用すれば良いのかよく分析する必要がある。
本研究では、広い視野で最適化問題に適用できる遺伝的アルゴリズムの並列化手法を決める考え方を整理し、評価関数の計算時間が長い場合はマスタースレーブモデル、短い場合は島モデルが適している、という考え方をするべきだという結論に至った。その考え方を元に、遺伝的アルゴリズムの並列化を「関数の最大値問題」と「巡回セールスマン問題」の評価関数の計算時間が長い場合と短い場合の計4つの最適化問題に対して行った。その結果、評価関数の計算時間が長い場合はマスタースレーブモデル、短い場合は島モデルが他方のモデルより処理時間が短くなると判明した。
山田 泰久 配列アラインメントを用いた剽窃レポート発見システムの検討
近年、学生がレポートを作成するとき他人のレポートに多少の改良を加えた剽窃レポートが増えている。このような剽窃レポートに対応するために最近では剽窃レポート発見するためのシステムが開発されてきている。
本研究ではバイオインフォマティックスの配列アラインメントという方法を用いて、剽窃レポートを発見する方法になりうるかを検討している。実際に学生が書いたレポートを用い剽窃レポートの可能性があるものを確認した。しかし、レポートには様々なケースあるが対応できないケースもあることがわかった。
安藤 健一 相関分析と回帰分析法による救急搬送要因と社会構成要因の関連性の分析
統計的な分析手法を用いて、実際の社会問題のデータを分析し、データの中からの課題発見を試みる。
具体的な問題として、身近な千葉県の救急車の利用統計からの課題発見を試みる。
千葉県内の各市町村での、救急搬送される要因別の統計と、人口や面積などの情報を分析の対象とする。
一般に、人口の多い地域では救急搬送の発生件数が多くなるほか、各地方自治体の駅数などの経済的要因が搬送の件数に関連しているという仮説を立て、さまざまな経済的要因との相関分析・回帰分析を行なった。結果として、人口と経済的要因が救急搬送との相関があり、また面積との相関性が低いことが判明した。東日本大震災のように全てが流されてしまった状況では、面積を考えて配置するのではなく、人口が集中している地区に配置することが望ましいと推測する。
野上 大樹 Webサイトの記事を用いた剽窃レポート発見システムの検討
近年、インターネットの普及に伴いWebサイトの記事を参照し、その記事をコピー&ペーストしてレポートを作成するという剽窃レポートが増えている。現在ではWikipediaといった所謂オンライン百科事典などもあり、誰でも容易く剽窃レポートを作ることが出来る。本研究では、このようなWebサイトからの剽窃レポートを発見するシステムの検討を行った。類似度は、形態素解析プログラムChasenを用いて形態素に分解して単語の出現頻度を計算し、頻度パターンの類似性により文章の類似度を判定して単語出現頻出ベクトルモデルによって算出を行う。ネット上の類似文章の検索はレポートの主題によった。また、実験では実際に学生が書いたレポートを用いて、剽窃レポートの可能性のあるレポートが検出できることを確認した。しかし、互いに比較する文章中の文章数の相違が類似度に影響を与えるという問題が新たに判明した。本論文では、この問題の改善案を提案する。
川浪 博之 N−gramモデルによるレポート剽窃の検出
大学などで学生がレポートを作成する際に、参考書やWeb上で書かれている文章を写してレポートを作成する学生が増加している。このような行為を剽窃という。この剽窃の行為によって、学生自身の考えや意見などが少なくなることや、教師の成績評価の妨げなどの問題が起きている。レポートの剽窃を検出する作業は、非常に時間を要するのでこのような剽窃のレポートを速やかに発見して指導することが望まれる。
そこで、剽窃の検出方法の一つとして、語の並びについてのN−gramモデルによる解析を行う。実際に、解析を行う上では参考となる文章に対して似ている文章と異なる文章との比較を行い、N-gramモデルがどれぐらい一致しているのかを示す一致率、どれぐらい似ているかを示す類似度、どれぐらい文字数が異なっているかを示す変換率を求め、剽窃か否かを判定する。
実際に、参考文献に対して似ている文章との比較では、一致率では68.57%と高く、類似度は0.99と1に最も近い値を示している。また、変換率では5.26%と異なる部分がほとんど少ないことから剽窃の可能性が高いといえる。一方、異なる文章との比較では、一致率は7.61%と低く、類似度は0.70となり、似ている文章の類似度と比べると低い値となっている。また、変換率では62.71%と異なる部分が多いことが示された。
有働 泰三 文献検索の絞込みにおける文法構造や単語の意味情報の活用の可能性
2000万件を超える文献アブストラクトを所蔵する医学・生物文献データベー「PubMed」は,今までは主にキーワードマッチングのAND/ORによる検索が行われてきた。
しかし、それでは余分な文献を拾ってしまうため、結果が利用しづらい。PubMedの付加機能であるClinical Queriesでは検索条件を追加し、臨床的な文献に絞り込む工夫をしているが、それも必ずしも十分でない。本研究ではClinical Queriesから更に絞り込むために、文章構造や語の意味の情報を加味することを考え、そのために必要な条件を検討した。具体的には、原因と結果をキーワードとして与えることを想定し、欲しい論文のアブストラクトからその2つのキーワードを含む文を中心として解析することとし、両方を含む文の文法構造と、両キーワードを繋ぐ語の意味を考えることによって、ユーザが望む条件に合う論文を選択できる可能性があることが分った。
松浦 弘和 クラスター解析による系統樹を用いた剽窃レポート発見の検討
本研究は学生レポートを対象に単語の出現頻度を基にして類似度を求め、その類似度を距離とした系統樹を作成し、類似レポートの出所を判別することを試みた。現在、ネットワーク環境の普及に伴い、学生レポート課題を出されたときに学生間でレポート内容を参照する事が多くなった。それに伴い他人のレポートをそのままコピー&ペーストして不正なレポートを作成する学生が増えている。
このような不正レポートの対策には、複数のレポートを比較し、不正な行為を行うレポートの検出が有効であると考え検討した。代表的な系統樹作成アルゴリズムとしては6通りの方法が挙げられるが、いずれの系統樹が最も有効であるかは従来の研究では報告されていない。本研究では、実際に系統樹を作成し、実際の学生レポートに対してどの系統樹作成法が有効であるかを考察した。
佐藤 一輝 CUDAを用いた数値計算・並列化処理
近年、「Graphics Processing Unit (以下、GPU)」の浮動小数点演算能力はCPUと比較して著しい成長を見せており、CPUの性能を大きく上回る。GPUはマルチプロセッサであり、高い並列性がGPUの持つ浮動小数点演算能力を実現している。
本研究では、NVIDIA社製GPUとCUDAを用いて、GPUに数値計算を実行させ、グリッド数とスレッド数を変えることによりどの様なことが発生するか、また高い並列性を得られることが出来るか実験を行った。その結果、プログラムの組み方に応じて高い並列性を得られるものと、そうでないものがあることが判明した。
中田 圭亮 CUDAを用いた並列計算処理
GPUの単精度浮動小数点演算能力はCPUのそれと比較して、近年い著しい成長を見せており、その性能はCPUを遥かに超えている。GPUはマルチプロセッサであり、現在最新のもので448個のコアを持っている。その高い並列性が、GPUのもつ高い単精度浮動小数点演算能力を実現している。
本研究ではNVIDIA社製GPU とCUDAを用いて、GPUに画像処理計算以外の数値計算を行わせ、GPUのもつ高い並列性を引き出せるか実験を行った。その結果、GPUのもつ高い並列性を引き出せるプログラムと、そうでないものがあることが分かり、GPUのもつ高い並列性を引き出すためには、様々な条件が存在することが分かった。
小原 史也 マルチコアプロセッサCell/BEによるイメージ処理の並列化
近年、処理の高速化のために、マルチコアプロセッサが使われ始めている。本研究では、6つの演算用コアを持つマルチコアプロセッサCell/BEを用いて、処理の並列化を試みる。 題材としてイメージ処理を取上げ、並列化における問題点を検討した。イメージ処理は、画素ごとの演算が中心であり、画素ごとに独立していれば高い並列性が期待できる。 イメージ処理の中から輝度反転処理、平滑化フィルタを選び、画素ごとの処理を並列に行うプログラムを作成し、並列による時間短縮を測定する。 実測の結果十分な並列性が得られなかったが、その原因としてプログラム上の直列部分の割合い、プロセッサ間のデータ転送に必要な時間などを分析した。
伊藤 諒 論文における内容類似度と文法的な依存関係との関連性について
医療・生物系論文データベースであるPubmedにおける論文の収録数は1600万件を超えており、研究者が自分に興味のある論文を探すために多大な時間を要することは必至である。 単純な一致検索では、関連性の高い論文のみを抽出することは難しく、関連性のうすい論文を含めて大量にヒットした中から、人力によって適当なものを選択している。本研究では、類似性の高い論文の効率の良い検索方法を実現するための手がかりとして、論文の内容の類似性と、語の文法構造上の依存性を含めた一致度との、関連について検証を行う。 もし関連が存在するならば論文の内容の類似性を用いた検索に利用できる可能性がある。 そこでPubmed内の似ている論文と似ていない論文同士について、語とその文法的な依存関係(typed dependency)を含めた一致度を比較する実験を行った。その結果、内容に関連のある論文同士の方が内容に関連のない論文同士よりも依存関係を含めた語が多く一致した。
特に形容詞句で名詞句を修飾する関係である「amod」や名詞句内の要素を表す「nn」といった名詞に関わる文法関係が最も多く、次いで動詞とその主語を表す関係である「nsubj」といった動詞に関わる文法関係が見られた。 以上の実験結果から、文法構造上の関係を含めた語同士の一致は、論文間の類似性のより良い尺度となる可能性がある。
土屋 洸人 マルチコアプロセッサCell-BEを用いたペアワイズアラインメントの並列化処理
回路の高速化によるプロセッサの性能向上について上限が議論される中、高速化の手段として注目されているのが並列処理による高速化である。本研究では PLAYSTATION3に搭載されているマルチコアプロセッサCell-BEを用いた並列処理を、既存のプログラムに対して適用し、十分な並列性を引き 出せるか実験を行った。 題材として配列文字間の対応計算をする配列のペアワイズアラインメントを取上げ、Cell-BEの6つのSPEプロセッサを用いて 1.5倍の計算速度を得ることができた。理想的には6つのSPEによって6倍の計算速度が得られるはずであるが、この結果が得られなかった原因として、分割されたSPEは全てのSPEが処理を終えるまで待機するため、SPEごとの計算時間の差があげられた。
米村 光 形態素解析プログラムChaSenを用いたWebサイトからの剽窃レポート発見システムの検討
ネットワーク環境の普及に伴い、学生がレポート課題を出されたときに、Webページからの内容を参照することが多くなった。それに伴いWebページの1部をそのままコピー&ペーストして不正なレポートを作成する学生者が増えている。このような不正レポートの対策には、剽窃元のWebページの探索から剽窃箇所の学習者への提示までを含めたトータルな支援システムを考えることが必要である。本研究ではこのような不正な行為を行うレポートの検出について検討した。剽窃の判定を行うため、形態素解析プログラム『ChaSen』を用いて語の出現状況を分析・比較する類似判定システムを提案する。実験では、Webから擬似的に作成した剽窃レポートと、それに似せたレポートを複数用意し、類似判定がどの程度可能であるかを検証した。
本橋 健治 Cell-BEを用いた遺伝的アルゴリズムの並列処理
近年、コンピュータの並列化によってデータ処理を高速化する技術が発展している。現在では1つのチップに複数のコアを搭載しているマルチコアプロセッサが普及しており、並列処理が身近なものになってきた。本研究では、SCE社が発売した家庭用ゲーム機「PlayStation3(以下、PS3)」に搭載されているプロセッサCell Broardband Engine(以下、Cell-BE)」を用いて遺伝的アルゴリズムの並列化実験を行った。その結果、並列化手法の一つであるマスタースレーブモデルでは、並列化しない手法よりも処理に時間がかかってしまい並列化しない手法よりも処理に時間がかかる結果となった。しかしもうひとつの並列化手法である島モデルにおいては、並列化しない手法と比較して最終的に約6.77倍の速度向上が見られた。したがって、問題によって並列化に有効な手法と有効でない手法があり、Cell-BEを用いてプログラムの並列化を行うにはメモリの容量や転送時の制限などのさまざまな条件があること、プログラムの組み方に工夫が必要であることがなどが判明した。
山口 智敬 R/S統計量によるClientにおけるRED検知
自己相似で特徴付けられるインターネットトラフィックはバースト性が強く,ボトルネックルータではしばしば輻輳が起こりパケットは棄却される.
ルータにおける輻輳回避のアルゴリズムの一つにREDがある.REDは到着したパケットを輻輳前にランダムに棄却することで輻輳を予防するが,ランダムな棄却には不都合もある.そこでREDによるランダムな棄却を検知する手法があれば,何らかの対策が立つと考えられる.たとえば冗長パケットの付与,パケットの重複送信,などが考えられる.
自己相似性で特徴付けられるインターネットトラフィックはREDの起動により自己相似性が崩れることが予想される.自己相似性の崩れを検知するパラメータとしてR/S統計量を利用する.
Ns2によるネットワークシミュレーション下において実験を行った結果,本パラメータ監視することにより,REDによるパケット棄却のタイミングを検知できることを確認した.
小垣 馨 人間の記憶の特性を生かしたWeb認証システムの提案
現在、インターネットの普及・発達により、Webサイトがますます増加してきている。しかし、サイトの閲覧以外で何かサービスを受ける場合は、本人認証が必要となる場合が多い。その際に使用される本人認証は、文字パスワード認証を用いるのが一般的である。 本研究では、パスワードによる認証を用いる方式で、「情動記憶」と「エピソード記憶」といった記憶の仕組みや性質をより活用することによって、ランダムで長い文字列でありながら長期に渡って覚えていられるパスワード認証システムを考案し、実験により評価した。被験者には、本研究認証システムを試してもらい、英数字8文字の文字パスワード認証システムとを比較して、1〜28週間に渡って覚えていられるかを評価した。その結果、本研究認証システムの方が、長期覚えていられる認証システムであるという結果を得た。
石川 実 ドリル演習を支援するためのコンピュータの活用
以前に中学校で数学の教育実習をさせていただいたことがあった。その際、教壇実習において、計算問題に積極的に取り組む生徒と取り組まない生徒がいた。計算問題に積極的に取り組む生徒はどんどん問題を解いていくが、あまり積極的ではない生徒は基礎的な問題に終始しているように見えた。そのため、数学ができる生徒とできない生徒の2極化が激しかった。
教育実習を通して、どのようにすれば計算問題に興味を持ってくれて解こうとし、そして習熟が図られるのかという疑問を持った。そのため、その解決方法として、計算問題をコンピュータ上で行うことを考えた。本研究は、中学校3年生で学ぶ平方根に関する計算問題を、Web上で行うシステムを実現し、効果を確かめようとするものである。
木岡 祐介 センサネットワークにおける通信方式とセキュリティを考慮したプロトタイプ設計
近年センサネットワークが注目されている。センサネットワークが普及している背景とし て、センサが小型化されたため設置が容易になったことや、安価になってきていることが要因と考えられる。それにより、クライアントは容易に実空間情報を取得することが可能となった。しかしながら、問題点はいくつか存在する。例として、Live E!プロジェクトのセンサシステムを挙げる。Live E!プロジェクトのデータ通信方式ではサーバの処理がボトルネックになっていることや、大量データを送信する際、遅延が起こるなどの問題点が挙げられる。これらの原因として、RPC(Remote Procedure Call )型通信のデータ取得方式に問題があると考えられる。そこで本研究では、Stream型通信(データを小分けで送る)のデータ取得方式を取り入れ、同時にセキュリティを考慮し設計を行なった。設計を行なうことで、現時点でのセンサシステムの改善を見込むことが出来た。
深谷 寛之 汎用GPUを用いた数値計算 -CUDAによる並列化処理-
GPUの単精度浮動小数点演算能力はCPUのそれと比較して、近年著しい成長を見せており、その性能はCPUを遥かに超えている。GPUはマルチプロセッサであり、現在最新の物で、240個ものコアをもっている。その高い並列性が、GPUのもつ高い単精度浮動小数点演算能力を実現している。
本研究ではNVIDNA社製GPUとCUDAを用いて、GPUに画像処理以外の数値計算を行わせ、GPUのもつ高い並列性を引き出せるか実験を行った。その結果、GPUのもつ高い並列性を引き出せるプログラムと、そうでないものがあることが分かり、高い並列性を引き出すためには、様々な条件が存在することが分かった。
三木 博満 手描き画像と画像群における類似度の研究
画像の検索における現在の主流である方法は、キーワードを用いた検索である。しかし、画像の持つ情報は多義性や曖昧性が高いため、キーワードのみで画像の全てを記述することは困難である。そこで、画像そのものをキーとして蓄積された画像群から類似した画像を検索する手法が考えられる。このことを考えた先行研究として、「手書き画像とのマッチングによる画像検索」という論文がある。
この論文のアルゴリズムの中で二つほど問題点が存在する。まず、先行論文では領域の位置関係を四方向で表現していた。これを角度で表現するように変更してみると、画像間の類似度を判定するシステムの精度が向上した。また、分割過程においてK平均クラスタリング法を用いていた。これを分割・統合法に変更したところ、類似度を判定するシステムの精度は若干低下したが、処理速度を向上させることができた。
板美翼 ビデオ階層に階層的FECを組み合わせた提案
h.264は2003年に標準化された新しい動画圧縮規格で、圧縮率も高く用途も広範囲にわたる他方、動画を画像の乱れを少なくインターネット上を転送する方法は様々考えられてきたが、その中でも冗長符号を負荷することによってパケット損失を回復するFECは、遅延が少なく有効な手法と考えられる。本研究ではFECをH.264/AVCに適用する場合の方法を検討する。
城戸淳司 MPIを用いた汎用PCによる並列化の適用
近年、コンピュータの進化は目覚しい発展の最中にある。それはより大きなコンピュータパワーへの欲求がコンピュータの発展を促してきた。データの処理を行う際に大学のようにあまり設備の整っていない研究環境ではスーパーコンピュータ等を用意することは難しく、汎用PCの市羽陽が余儀なくされる。そこで本研究では、分散メモリ型のMPI(Message-Passing Interface)による複数代のプロセッサを用いた並列処理を行うことを提案し、その効率を評価する。
小山直人 内部告発の為の匿名性を持ったデジタル署名の提案
現在、日本において内部告発の数が増えつつあるが、告発による不当な扱いを恐れて告発に踏み出せない人も多数居るだろう。そこで、匿名であるデジタル署名を使った電子文書による内部告発を提案したい。デジタル署名をすれば自信を明らかにしてしまい、署名をしなければ信用性が失われる。匿名でありながら自身の所属を明らかにし、且つその組織に自身が所属していることを証明できるデジタル署名として、グループ署名がある。本論文ではグループ署名を利用し、条件を全て満たす匿名の内部告発の仕組みを提案する。
杉原一史 関連情報の収集による知識発見支援の検討
現在、文章として書かれている情報がインターネット上に数多く存在している。そこで、本研究では、インターネット上から収集した情報を元に、そこから新しい知識を発見する仕組みを提案し、それを支援するシステムを作ることによって、実際に新しい知識を発見できるかどうかを検討した。実験の結果、本研究で主張している知識発見の原理では、新しい知識を発見できる場合と、出来ない場合があるということが明らかになった。その結果を報告する。
田島栄介 キーワードの共起を用いた論文検索法と、医学文献データベース 「PubMed」における評価
論文を検索する研究者にとって、ある1つの論文が見つかった時に他の類似する話題の論文を集めたいと思うのは当然である。また、インターネット上の多様な情報源へのアクセスが可能となった今、それらを容易に検索することを支援する機能が求められている。
本論分では、医学文献データベース「PubMed」においてある論文と関連する論文を「共起」を用いて検索を行い、提示する方法を手案する。ここでいう「共起」とは、2つ以上の論文間において同じキーワードがある一定以上出現すること、とする。本研究で提案した方法をいくつかの論文について試した結果、共起するキーワードが15〜20個、類似論文は61〜149個を抽出することが出来、それぞれの論文は十分に関連する話題のものであった。
山下裕之 インターネット上におけるパケット到着間隔の遅れと損失率の関係
近年、IP電話や動画配信(ストリーミングなど)のアプリケーションやネットゲームが普及してきている。これらが同時にネットワークを通ると、途中のルーターで輻輳が起こりえる。この輻輳が起こるとネットワークの利用効率が下がる。
輻輳は送出差を絞ることによって回避されるが、輻輳が起こるより前に検出できれば、早い段階での回避動作が可能になり、失われるパケットの数が減る。
本研究では、輻輳の早期検出のため、パケットの遅延と損失の関係を調べ、輻輳によるパケット欠落が起こる前に遅延が増加することを実測したところ、パケット欠落の直前に起こる遅延の増加が検出できる場合があることを発見した。
伊藤栄佑 経験学習を支援するデジタル教具の提案と実証
近年, ゆとり教育や教科情報の新設,教育基本法改正といったように, 学校教育の世界が大きく動いており授業の行い方が見直されてきている. 本研究では,生徒が授業に対して傍観者になってしまっている懸念を指摘し, その懸念を解消するには経験学習が必須であり,その手段としてデジタル教具が 有効である事を述べ, 「経験学習を支援するデジタル教具を使う事で生徒の主体性の実現が図れる」という仮説を立てた. その仮説を実証する為に,具体的にどのようなデジタル教具が有効なのかを検討し,その実装を行った上で 東邦大学付属東邦中高等学校にて既存の授業方式との比較実験を行った. その結果,内容の理解に関しては違いが見られなかったが,授業への参加度や 興味関心の幅が増えたという結果を得る事ができた. 又,そのようなデジタル教具を教師が,授業や生徒の状況に応じて容易に作る事の必要性を述べ, 教師がデジタル教具を作成できるシステム「COMind」の指針を示した.
大木裕介 正確な位置情報を用いた案内システムの設計
現在、大きな公園やパーキングエリアには、付近の建物や渋滞の情報を知ることが出来る、いわゆる案内システムが設置されていることが多い。登録されている情報はその場で閲覧するものが多く、目的地までの道順や情報を案内システムから離れた状態で閲覧出来るものではない。しかし、実際に屋外で目の前の不特定な物に対して情報を提供するシステムも存在するため、屋外で案内システムや情報を閲覧することも可能なのではないだろうか。本研究では、持ち運び可能なモバイルツールを用いて、目的物の前までの道順を表示することや、目の前にある物の情報をその場で閲覧することの出来るシステムを設計し、その中で自分の位置と方向の情報を制度良く得る方法としてインターネットDGPS(差分補正型GPS)を検討した。誤差を実測した結果、期待していた1m〜5mの精度は得られなかったため、更に要因の分析、代替方法の検討などが必要であることが分かった。
清水駿一 遅延を考慮に入れた分散ハッシュテーブルの提案
分散ハッシュテーブルの1つであるChordはPeer-to-Peerネットワークにおいて非常に効率的な検索を行う。
しかしChordはノードの配置を回線の遅延や物理的な距離を考慮に入れていないので、経路によっては検索に無駄な時間がかかることがある。
本研究では、そのChordにネットワークの遅延を考慮に入れるために、まずランドマークノードと呼ばれる計測の基準となるノードを用意して、新しく入るノードとの遅延を計測し、その遅延時間をランドマークノードからの距離として仮想的な2次元空間上に配置していく。距離が近いノード同士のグループが作れるように、空間をいくつかに分けて、その空間ごとにIDを割り振り、Chordとほぼ同じ仕組みで検索全体の時間を減らす手法を提案する。
平岡大昌 SCTPの概要とマルチストリーミングの実用性の検証
近年、インターネットが大きく普及し、プロバイダの料金が下落した。 それにより、1つの端末に複数のネットワークを接続することが比較的容易になり、 マルチホーミングを使いやすい環境に近づいてきた。また、IP電話やビデオ会議、 動画のストリーミング配信など、インターネットの新しい利用方法が増えているが、 今までのプロトコルでは遅延が大きな問題になっている。 そこで新しく考え出されたものがストリーム制御伝送プロトコル(SCTP)である。 このプロトコルはマルチホーミングと遅延を解消しうるマルチストリーミングという機能を備えている。 ここではRFC 3286 - An Introduction to the Stream Control Transmission Protocolなどを参考にし、 そこから得られたSCTPの概要を、またそれがTCPと比較してどのような特徴を備えているか、 また、SCTPの大きな特徴のひとつであるMulti-Streamingの詳細を検討し、実用性についての分析を行った。
佐藤香奈子 FECにおける分散インターリービングの提案
現在、世の中では盛んに、ビデオ配信やIP電話等のリアルタイム通信が行われている。リアルタイム通信においてパケットの損失は、遅延の原因となる。TCPで用いられるARQ(再送による回復)では再送時に大きな遅延が発生する。代替の回復手法としてFEC(冗長符号を付加して送出することにより損失を回復する手法)が提案されている。FECではパケット損失のような長区間の回復をするために、インターリービングを用いている。しかし、パケットが連続して失われるバースト損失は回復ができない。そこで離れたパケット同士に対して行う事によって、回復率を向上する手法を提案する。パケット損失の実測データを用いてシミュレーションをした結果、連続のインターリービングよりも、離れたパケット同士でインターリービングを行ったほうが回復率が向上するという結果を得た。
小垣馨 情動記憶を用いたパスワードの作成方法の提案
現在、コンピュータへアクセスする際、本人認証にはパスワードによる認証が主流である。自宅や会社・学校でのパソコンのログインやインターネット上のサービスへのアクセスなど様々な場面でパスワードが用いられる。しかし、パスワードはランダム(意味のない)で長い文字列が推奨される。これをユーザが覚えるのは容易ではない。 本論文では、「情動記憶」という人間の記憶の特性を利用した忘れにくいパスワードの作成方法を提案し、それと従来用いられているランダムに作成されたパスワードを比較し、本当に忘れくいパスワードかどうか検討した。その結果、情動記憶は確かに強固な記憶であったが、本論文で提案した方法では不十分であり、それを補足するシステムが必要であることが分かった。
山口智敬(物理学科)
藤巻聡美 IPv6ハンドオーバにおけるバッファリング機能の有効性の検証
近年、移動体通信の需要が高まり、通信を継続しながらサブネットを移動する様々なモビリティプロトコルが提案されている。しかし、シームレスなハンドオーバを可能にするには、接続を切り替える処理の伴うパケット遅延や損失等の問題を解決する必要がある。
現在までに提案されているモビリティプロトコルのシームレスハンドオーバはシミュレーションによって理想的な環境下での性能評価が主であるが、本研究では特にパケット損失の低下に焦点を絞り、実際に既存のモビリティプロトコルへバッファリング機能を実装し、有効性を確認した。その結果、通常のハンドオー場時間程度ならばパケット損失が起こることは無く、バッファリング機能は有効であることが確認できた。しかし、理想的なハンドオーバ時間以上の時間がかかった場合には256パケットしかバッファリングできず、それ以上のパケットは損失することが分かった。また、バッファリングしたパケットを非常に短い時間で出力してもMobile Nodeへの転送時にパケット損失が起こることが確認できた。
八木勝海 パケット分割を考慮した動画配信
DSL、FTTH等のネットワークの普及に伴い、インターネットを利用した動画配信が行われている。近年、無料の動画配信など、そのサービス形態は地上波のTV放送に近いものになりつつある。一般的に動画配信での、動画圧縮技術では、MPEG2、MPEG4が主流であり、広く利用されている。それらの多くはフレーム間相関を利用して圧縮率を上げており、より密な情報を持ったファイルが作成される。圧縮率が上がっていくにつれて、小さなデータの欠落で動画再生に影響が出てくるのではないだろうか。
そこで、本研究では、転送されるデータはイーサネットのフレームに分割されることと、ストリーミングでの動画配信に注目し、動画配信技術の一つ、Motion JPEG2000を用いて、パケット分割を考慮した動画配信を提案、設計するものである。
湯浅大樹 回線に依存しない動画配信方法の提案
近年インターネットの普及に伴い、今までのメールやHPの閲覧などに加えて、IP電話や動画配信などインターネットのマルチメディアかが進んでいる。現在、動画配信に用いられている方法として、大きく分けて二種類ある。ひとつは、配信データを受信者に向けてすべてて脳し終わった跡に再生する方式である。この方式では、受信者は大容量データ転送では待ち時間が長いことや、生中継のニュースのようなリアルタイムでの配信には向かないというデメリットがある。そこで、これを解決する方法として現在多くの動画配信アプリケーションで用いられているストリーミング方式がある。しかしながら、この方式ではデータを受信しながら再生を行うため、ネットワークの状況により動画の品質が左右される。そこで、本研究では一度に多数の受信者に向けてストリーミング配信をするときに、動画再生品質とネットワーク状況からの影響を軽減する手法として、複数のネットワークから同じデータを受信することを提案する。ネットワークごとの遅延状況により優先度を決定し、パケットの取得優先度を決定する。本研究では、本システムと既存の単数ネットワークからのデータ取得において、スループットと帯域の安定度で評価をする。
伊藤大輔 東邦大学におけるディレクトリサービスの提案
パーソナルコンピュータの普及によるコンピュータリソースの増加に伴う管理コストは非常に大きなも のとなっている。そして、ここ東邦大学でもコンピュータリソースの増大は発生している。ユーザ認証 の必要なシステムは、メールアカウント、学内のコンピュータの利用、Webからの認証などが考えられ、 今後さらに増えることだろう。 これらの問題に対する回答としてディレクトリサービスによるコンピュータリソースの統合が考えられ た。ディレクトリサービスではユーザの情報を統合的することで、保守コストの削減とセキュリティの 強化を可能とする。そこで本論文ではディレクトリサービスの一つであるにLDAPよる認証環境を構築 する上で必要な技術の解説を行い、東邦大学を例において提供する方法を提案する。
今村一哉 E-healthの概要と遠隔診療の可能性の検討
近年、世界のディジタル化は進行し、全ての事業はオンライン化されほとんどの活動は通信端末を利用 して運用されている。我が国、日本においても例外ではない。インターネット普及率は88%と9割近く の利用者がおり、現在の日本は情報通信大国と言える。また、利用目的としてインターネットなどの情 報通信技術を介した医療というものが注目されつつある。一方で、医療機関におけるIT化は始まったば かりではあるが、着実と進行してきている。本研究では、情報通信技術を介した医療に対する理解およ び情報通信技術を介した医療の一つである遠隔診療の可能性を、模擬システムの作成により検討した。
植木裕正 大学におけるPodcastingの有効利用法の検討
近年、ポッドキャスティングというものが注目を集めている。2004年頃からアメリカで流行し始めた新 たなインターネットラジオサービスであり、現在ホワイトハウスをはじめ、ABCやCNNなどのテレ ビ局、新聞社、IBMやゼネラルモーターズといった大企業がポッドキャスティングを配信している。日 本でも、iTunes Music Storeの日本進出を機に注目され始め、読売や日経などの新聞社がポッドキャス ティングを配信したり、ポッドキャスティングを映画のマーケティングに利用する例も出てきている。 本論文では、ポッドキャスティングの技術的背景を調査し、配信実験を通して大学という環境下におけ るポッドキャスティングの有効な利用法を検討する。
小牟田洋佑 Bluetoothにおける干渉問題の分析と検証
コンピュータの発達やインターネットの普及により、情報技術が急速に発展してきている。近い将来、
あらゆる情報機器がネットワークで結ばれ、誰もがいつでも何処でも情報をやりとりできるユビキタス
社会が到来する。このようなユビキタス環境において、機器同士がネットワークを形成することにより
様々なサービスの実現が期待できる。
Bluetoothは、身の回りの機器を簡単に無線接続する技術であり、PCやPDA、及び家電機器への搭
載も増えてきている。しかし、その反面、同じ周波数帯を使う無線LANや電子レンジ、医療用機器な
どが近くにあると電波的干渉がおき、通信速度が落ちることがある。
本研究では顕在化してきている電波的干渉の問題に焦点を当て、通信時にBluetoothが受ける干渉の
度合の把握や干渉による通信への影響を測定し、どのような環境のときに通信への影響が大きくなるか
を明らかにした。その結果を報告する。
平林洋敬 P2Pストリーミングの現実性の模索
ブロードバンドの普及増大に伴い、動画コンテンツを視聴する機会も増えてきた。総務省でもインター ネット回線を利用した放送の実験を開始するなど、動画ストリーミングが一般的なものとなってきた。 しかし、配信側からすれば、動画ストリーミングは未だに設備投資コストがかかるものであり、大規模 での動画配信は普及が進みにくい状況である。本研究ではこの問題点を解決するべく、従来のクライア ント・サーバモデルに代わるP2P技術を用いたストリーミング配信技術について検証していく。
山口寛太郎 IPv6導入における最適な移行技術の提案
近年、各所でIPv6という言葉が専門誌だけでなく、一般紙でも取り上げられるようになってきた。ま
た、ネットワーク環境の普及に伴い、いつでもどこでもネットワークを利用できるユビキタスネットワー
クへの期待も高まっている。しかし、現在利用されているIPv4はアドレス個数が少なく、将来的にユー
ザが利用できるアドレスが枯渇する問題がある。さらに現在のIPv4ネットワークではIP端末の移
動が考慮されていなかったために、アプリケーションを利用しながら移動することは出来ない等の問題
がある。これらの問題を解決するために開発されたプロトコルである。
しかし、ほとんど普及していないのが現状である。その原因は、移行技術がわかりづらく、コスト、セ
キュリティ、コストに見合う結果が不透明なのではないかと考える。本研究では移行するための技術を
調査し、さらに移行に関する利点や弊害についても検討する。
須藤丈智 TOSを用いたMotion-JPEG2000配信方法の設計
近年、ネットワークの普及に伴い、携帯電話などの転送速度の遅いモバイル環境でのビデオ配信や、光回線などの高速な回線でのビデオ配信など、さまざまな環境に合わせ圧縮された動画を転送する機会が増えている。そのような環境に合わせるために動画圧縮技術として、MPEG-1, MPEG-2, MPEG-4, H261, H263などのさまざまな方法が開発されてきた。そのなかの一つとして、近年、静止画圧縮のためのWavelet変換を用いたJPEG2000が規格化され、それを動画に援用したMotion-JPEG2000形式が提案されている。
Wavelet変換を用いたJPEG2000は、一枚の画像を高い周波数成分と低い周波数成分に分けることができる。この圧縮特性をネットワーク転送にも有効に利用できる可能性がある。
また最近では、光ファイバの普及等により、高速な回線と低速な回線が混在し、ストリーミングの動画配信等では、それぞれの低域にあった分だけの動画ファイルをストリーミングサーバに用意しなければいけない状況になっている。
そこで、本研究では、階層型にデータを分割できるMotion-JPEG2000と、送信パケットに優先度を用いることのできるTOSを使い、ノードに適した動画配信方法の提案、設計を行う。
塚原大祐 過去の検索事例から生成したメタデータによるWWW検索精度の向上
現在、ユーザがWebにおいて情報を探す手段として、WWW検索エンジンが多く利用されている。現在のWWW検索では、自分のほしい情報が見つからない、あるいは探すのに非常に手間がかかるといったケースも多い。しかしユーザの求める情報は、広大なWWWのどこかには存在する可能性は高い。過去を遡れば、その情報を検索できたユーザもいたはずである。そしてそのユーザは、同じような検索キーワードで検索してその情報にたどり着いた可能性が高い。そこで本研究では、この過去に検索された情報を知るために、『情報についての情報』と呼ばれる「メタデータ」、及び「コミュニティ別に分けた検索」の二点を利用して、WWW検索精度の向上主意段を検討する。本稿では、現在の検索エンジンの精度を検証し、実現するメタデータ検索システムの利点について報告する。
古田誠 マルチメディアストリーミングにおけるコンテンツに適応した送信制御設計
近年、インターネットの普及に伴い、TV会議や画面を含むマルチメディアデータのリアルタイム再生を行う技術が注目されている。しかし、これらのストリーミング通信では輻輳発生によるパケット損失によって動画再生の品質低下や、遅延時間による利便性の低下が問題となる。本論文ではリアルタイムストリーミングの信頼性あるデータ転送、輻輳回避及び、転送データの品質向上の観点から遅延時間を考慮に入れた通信制御設計の指針を提示する。具体的には、配信するコンテンツが一方向型配信か双方向型配信かの選択がある。FECではインターリーブ区間長や冗長度の決定、再送ではバッファ長、再生速度可変、Ack再送またはNack再相当の選択及び組み合わせを行い、遅延許容時間内で通信制御設計を行う指針を提示する。
伊藤栄佑 E-learningを用いた授業サポートの提案と問題点の調査・検討
大学進学率が40%を超えてきている近年、大学での教育が大きく見直されつつある。そんな中、コンピュータシステムを用いた教育方法であるE-learningが注目されている。東邦大学でも幾つかの取り組みが行われているが、互いの連携が無くまだ始まったばかりである。本研究では、東邦大学におけるE-learningを導入する際の問題点を明確にし、E-learning導入のきっかけとなることを目的とした。そのために、東邦大学の教師と学生にアンケートを取り、実態を調査するとともに、一般論としていわれている問題点との比較検討を行った。調査の結果、多くの教師が導入したいと考えてはいるが、導入時の手間や実際にどうやって運用したらいいのか分からない為に、踏みとどまっていることが分かった。又、学生においては授業外の学習時間の増加と、E-learningに対する前向きな姿勢が確認できた。
折原健太 FLASHを用いたe-learningコンテンツの提案と検証 〜SSL for Beginners〜
近年、世界がデジタル化し、すべての事業はオンライン化されほとんどの活動は通信端末を利用して運用されている。これは1990年後半から情報通信技術が急速に普及し、「IT革命」が日本に流れ込んだためである。これに伴い、日本政府は2005年までに世界最先端のIT国家となることを目標とした「e-Japan戦略」や医療・食・行政サービス等における利活用に重点を移した「e-Japan戦略II」を策定したためである。これらの戦略によってパソコンの普及率は急速に加速し、インターネット通信はパソコン利用者の9割近くが利用がいる。そのため現在、それら利用者を狙ったサイバー犯罪が急速に増加している。サイバー犯罪に関して安全な通信を実現するためにSSL通信が現在利活用されている。しかし安全な通信があるにもかかわらず危機意識が薄いパソコンビギナーにはあまり理解されていないのが現状である。理解度が低いと本来のSSL通信の力は完全に発揮できず、安全な環境は整備できていない。
さらに、e-Japan戦略IIの教育(知)の部分にクローズアップしてみると、社会人が時間・場所を選ばずITを活用して教育を受けることができる環境を整備するとe-Learningを推奨している。e-Learningの最大の利点は「いつでも・どこでも・自分のペースで学習できる」というメリットがあり、会社研修や学校教育の面でも注目されている。
このように日本政府は日本のIT化を押し進めている反面、教育では教育方針の「ゆとり教育」を推進し近年、学習時間が減少している。そのため、学習者の学習意欲が低下し、学習者の興味が無い学習は学習されることが無くなってしまった。
そこで本件急では、パソコン利活用ビギナー・学習意欲の低下した学習者を対象とした安全通信のSSLを題材とした教材的コンテンツを分かりやすく作成し、SSLの認知度・学習意欲の向上を図り、動作原理の違いによる理解度の変化を比較・検証するとともに、教材作成上の問題点を指摘した。
酒井めぐみ セマンティックWEBについての調査
現在WEB上では膨大な量のデータが存在し、ユーザは的確な情報を得ることが難しくなってきている。この問題を解決する次世代の技術として考えられているのがセマンティックWEBである。セマンティックWEBではデータの"意味"を取り扱うことによってユーザが問題解決をするために必要な有益な情報を得ることができるようになる。セマンティックWEBは新しい技術であり、発展段階にある技術である。本論ではWEBが今後どのようになってゆくのかを知るために、セマンティックWEBについて調査したことを説明し、その意味や将来性について論ずる。
長島史和 P2Pファイル共有と、それを利用した学内共有モデルの提案
日々インターネットに関連した技術が進歩する中、注目されているものの一つにP2Pというものがある。P2Pを利用したファイル共有アプリケーションはさまざまな問題をはらむとともに大きな可能性も秘めている。本論分ではP2Pの背景や現状を踏まえ、ファイル共有アプリケーションの問題点を調査すると共に、大学などの教育機関で情報共有にP2Pによるファイル共有を用いる方法を検討し、それに必要な仕様や具体的な使い方を提案した。
三村公利 VoIPにおける遅延の分析と考察
近年、IP電話やVoIPという言葉を街中で多く見かけるようになった。一般家庭においても、企業においても、今までの固定電話からIP電話へ移行したり、その計画を持ち始めている。IP電話に「050」という番号で始まる電話番号をつけたサービスが開始され、今後ますますIP電話の普及は加速していくだろう。
しかしそのなかで、音質の向上などによるPCへの負荷の増大やデータ量の増加、それに加え、多くの人がインターネットやIP電話などを使用することによって起きるネットワークのトラフィックの増加などのため、話し手がしゃべってから相手に届くまでに途中で遅れが生じてしまう遅延が発生し始めた。その遅延にもハードによる遅延とネットワークによる遅延がある。巷では常にネットワークの問題のほうが大きく取り上げられ、ハードによる遅延が忘れられてきた。最近では、ネットワーク回線もだんだん太くなっており、ネットワーク回線が輻輳することが減ってきた。そのなかで、本論文では、多少古いハードを使っている場合、ネットワークによる遅延よりもハードによる遅延のほうが大きいのではないかという仮説を立て、実際に測定してみることにより、これから遅延を解消していく上でどの遅延を解消すれば効果的かを示していく。また、LAN内だけにとどまらず、インターネット網を当して自宅のPCと研究室のPCをつなげ、LAN内のみと比べてどの程度の遅延に差があるのかを検証する。
田辺憲行 Stream Control Transmission Protocolの調査及び分析
近年のブロードバンド回線の一般化やプロバイダ料金の下落によって今まであまり現実的ではなかったマルチホーミング機能が見直されてきた。しかし実際にマルチホーミング機能を有しているルーター等の普及は進んでいない。そこで、本件急ではTCPとの互換性のある新しいトランスポートプロトコルとして提案されているSCTP(ストリームコントロールトランスミッションプロトコル)がマルチホーミング機能をサポートしているので、これの詳細を検討し、実用性を分析する。
麻生健太 FLASH を用いたe-Learning コンテンツ
近年、私たちのIT 環境は国家戦略の「e-Japan 戦略」が前倒しになるほど、急速に整っていっている。また、2003 年7 月に発表された、「e-Japan 戦略」では、e-Learning によって、個人の能力向上とそれに伴う国際競争力の向上にも重点がおかれている。標準化も進んでおり、何より、自分のペースで学習ができるというメリットから、会社研修や学校教育からもe-Learning は注目されている。しかし、現在広く使われているコンテンツは、文字及び静止画と音声の組み合わせや、講演・講義のディジタルアーカイブであることが多く、ネットワークディジタルメディアの能力を使い尽くしているとは言い難い。その一例として、ネットワークディジタルメディアが提供する動きのある図版を用いることによって、静止画図版に比べ、理解度の向上が期待できる。本研究では、教材例として、ネットワークの動作の理解を取り上げ、その時刻を追った動作を「macromedia FLASH MX(R)」を用いてアニメーションとして試作し、動作原理の理解のし易さを比較・検証し、併せて教材制作上の問題点を指摘した。
宮下真 フレキシブルWBTの提案とその構築
近年パソコンの普及が進み、大半の家庭に一台以上あるといってよいほどになった。これにより、幼い時期からパソコンに接する機会が増えていき、今までよりもより馴染みやすいものとなっていくことが予想できる。また、科学が発展していくにつれて、テレビ放送やゲームなどの画面を見て遊ぶ機会が増加してきた。今の、そしてこれからの子供には教科書とノートに向き合って勉強するだけでなく、画面を見ながら学習していくことが求められるだろう。そこで、今資格試験や会社での研修などに用いられているE-Learning、特にその中のWBT(Web Based Training)を小・中学生という義務教育課程に導入していくべきだと考えた。だが、現在存在するWBT には欠点も多くみられ、これらをこのまま導入する事はできない。また、ただ知識を詰め込むだけではなく、完璧に理解をさせていくことを目的とする小・中学生の教育においては、利用している側の理解度を把握し、柔軟に対応していくことが要求される。そこで、利用する側の理解度を把握し、それに合わせて問題を出題していく機能を持ったWBTを提案し、実装・評価する。
高嶌圭輔 SIP におけるIPv6 技術の導入
近年、IP 電話の普及が進んでいる。IP 電話は、通話のための音声をパケット転送する機能に加えて、相手との接続制御や通信サービス様態を制御する必要があり、その制御を行うプロトコルのひとつにSIP(Session Initiation Protocol) がある。一方、クライアントが接続相手を指定するために必要なIPアドレスは現在、枯渇の問題がある。現在広く用いられているアドレス変換(NAT) による解決はSIPとの親和性が薄く、根本的な解決であるIPv6 への移行が必要である。残念ながらSIP サーバ製品はまだIPv6 に対応していない。そこで、フリーのSIP サーバをIPv6 化し、IPv6 を使ったIP 電話の接続や会話が可能であるかを確認し、問題点を指摘する。
藤巻聡美 Mobile IPv6 におけるハンドオーバー技術について
近年ネットワーク技術の発達により、多様な通信メディアを用いて様々な場所でネットワーク接続ができるようになった。しかし、異種メディア間を移動する場合にコネクションが切れてしまう問題があり、それを解決するものがMobile IP である。Mobile IP では異ネットワーク間の移動時にもIP アドレスを保持するのでコネクションが切れないが、現状の提案仕様ではネットワーク間のハンドオーバー時の遅延が大きく、移動時に一時的に通信が途絶する可能性がある。本研究ではハンドオーバー時間を短縮する方法を検討するためMobile IPv6 の実験環境を導入し、ハンドオーバー時間の構成要素を分析した。
山本真里子 VPNサービスに対する攻撃の可能性とその検知
近年のインターネットの普及により、侵入・攻撃が増大している。ホストやサイトを守るために、侵入・攻撃を検知する技術として防火壁(ファイアウォール) と侵入検知システム(IDS:Intrusion Detection System) が使われている。 一方、SSH、IPsec・SSL などに代表される仮想専用回線(VPN:Virtual Private Network) 技術は、転送データを暗号化することにより、データの秘匿性を確保すると同時に、ホストやサイトを侵入や攻撃から守る有効な手段であると考えられる。しかしながら、VPN に対してもサービス妨害(DoS:Denial of Service) 攻撃などは可能であり、絶対に安全というわけではない。本研究は、現在使われているルールベースのネットワーク型IDS をVPN と併せて用いることによって、攻撃をどのようにどれだけ検知できるのかを評価し、その評価を元にしてVPN に対する侵入検知システムのあり方を検討する。
八木勝海 NORMプロトコル
大多数のデータ配信においてIP マルチキャストは非常に有効である。しかし、IP マルチキャストではUDP を使用するためTCP のようなデータ到着信頼性を実現されていない。データ到着信頼性をマルチキャストに付与するものとしてReliable Multicact(RM:高信頼マルチキャスト) がある。RM にはさまざまな方法があり、ACK やNACK を利用した再転送によるパケット回復、FEC によるパケットロス率の軽減などが提案されている。RM の一つとして、NACK(不到達確認要求) をしてパケットを回復するNORM プロトコルがIETF で提案されている。NORM ではパケット損失した際にのみ再送要求をだすという点でACK の再送制御より優れていると考え、NORM を用いることの利害得失、NORMを実装運用する際の問題点を調査し、NORM µ¶ の実用化を目指すものである。
湯浅大樹 高信頼マルチキャストにおけるTCPに代わる輻輳制御WEBRCについての検討
近年、インターネットの普及に伴い、一対多通信において効率の良いマルチキャストの需要が高まりつつある。しかしながら、マルチキャストのトランスポート制御はUDP で行われる為、輻輳制御がされていない。その為、TCP のように輻輳制御が組み込まれているプロトコルとUDP のように組み込まれていないプロトコルでは、帯域の使用において公平性に欠ける。また、UDP ではネットワークの状況を考慮せずに通信をするので、輻輳を引き起こす可能性がある。そこで、本研究では、SIGCOMM で提案されているWEBRC をUDP 上で用いてTCP との帯域共存について検討した。実験の結果、WEBRCを使うとネットワークの状況に応じて使用する帯域の割合を変化させている事が分かった。WEBRC とTCP との帯域を公平に共有させる実験において、ネットワークの状況に対してTCP の方が敏感に反応するが、全体としてみた場合公平に帯域を共有している事が示せた。
福田芳真 IPv6環境における侵入検知
インターネットは、その爆発的な利用拡大により、情報インフラとしての利便性が確立されてきている中で、アドレスの不足や経路情報の肥大化による問題が指摘され、新世代のIPv6が提案・実装され始めている。ところで、IPv6によりアドレス空間が非常に拡大した結果、家電製品や携帯電話などさまざまなものにIPアドレスが付けられ、通信の対象となることになった。このようなユビキタスなネットワーク環境への移行によって、セキュリティは今まで以上に重要となることに加えて、既存のインターネットで避けていた新しい問題が発生する。
具体的には、ユビキタス環境では家の外部から内部にある機器にアクセスするなど、クライアント・サーバ型ではないエンド・エンド型のアクセスが利用されるため、クライアント・サーバ型で有効であった既存のセキュリティ技術、つまりポート・アドレス対によるパケットフィルタとNATの併用によるアクセス制御の実現が、エンド・エンド型通信ではアクセス障害となってしまう。エンド・エンド型アクセスを許す程度に柔軟であり、かつ安全を守るのに十分なセキュリティを確保できるファイヤウォールの仕組みが必須となる。
本論文ではその実現手法として、個別のパケットの静的なパターンを検知するのではなく、通過するパケットのシーケンスを監視して異常を検出するIDS(Intrusion Detection System、侵入検知システム)の技術を、このIPv6化したユビキタスネットワーク環境でのセキュリティ維持の機構として提案し、そのために必要な機構の設計を行い、侵入判定のための異常アクセスパターンの収集を試みた。結論としては、NATがないネットワークにおけるファイヤウォール機構として、既存の静的パターンによるパケットフィルタリングでは実現できない、外部からの限定的シーケンスのみに対するアクセス許可が可能であることが確認された。
石川卓永 大幅な遅延によるTCPの限界と、惑星間通信のための改善案について
トランスポート層のプロトコルの1つTCP(Transport Control Protocol)は、転送信頼性を応答確認によって確保し、また応答を用いてフロー制御・輻輳制御を行っている。しかし、現状のTCPでは、遅延の極端に大きい超長距離通信、たとえば惑星間通信を想定した場合、エンド・エンドで応答を用いて制御する仕組みは、著しい性能劣化をもたらす。本論文では、大きな遅延が発生した場合のTCPの動作を実験によって確認し、その改善案について論じている。
磯野真吾 FEC通信による誤り訂正について
マルチキャストやVODなどのマルチメディア通信において、TCPによるバルクデータ通信では応答確認の集中や輻輳による通信の支障が生じる場合がある。このような状況ではUDPを用いる事が多いのだが、このプロトコルに誤り訂正機構は無い。そこで、送信側が冗長な誤り訂正符号を付加し受信側で誤りを訂正するFECを使用する。
本研究では、リードソロモン符号によるFECを用いた通信の誤り訂正について検証を行った。
荻野彰 IPv6環境におけるIPsecによるIP-VPN
近年、インターネットおよび高速なネットワークインフラの普及によりVPNが身近なものとなって来た。VPNを実現する方法は多々あるが、インターネットを利用するVPNにおいて多くの場合にはIPSec通信が使われる。しかし、IPsecはまだ成熟しきっていない技術であるため問題点も多い。本研究ではIP-VPNとIPsecの有用性と問題点についての調査を目的とする。 また、IPv6環境ではIPsecが標準で使えるようになる。IPv6環境におけるIPsecについても合わせて調査した。
鳥山悟 JMFを用いた遠隔教育システム
近年のブロードバンド化よる大容量インターネットの普及により、インターネット上での映像や音声を通したマルチメディアコミュニケーションの普及が現実を帯びてきている。またシステムを作るうえでJAVAというマルチプラットフォーム対応言語が注目を集めている。
本研究では、JAVA言語およびそのライブラリパッケージであるJMFを用い
インターネット上での利用を考慮し、機種依存性をないシステムを実現する
音声・静止画像を用いた実況中継型の授業を実現する
インターネットの特性である双方向性を持った遠隔教育システムを実現する
ことを目標としてシステムを作成し評価する。
須藤丈智 Motion-JPEG2000に関する調査及び検証
近年、ネットワークの普及に伴い、ネットワーク上で圧縮された動画を転送する機会が増えている。圧縮技術として、MPEGなど様々な方法が開発されてきた。最近静止画圧縮のためのWavelet変換を用いたJPEG2000が規格化され、それを動画に援用したMotion-JPEG2000形式が提案されており、その圧縮特性をネットワーク転送にも有効に利用できる可能性がある。そこで、本研究では、Motion-JPEG2000に対する理解とMotion-JPEG2000の特性を生かした用途を検討する。
田澤力 FECの損失回復に最適な冗長度を決定するためのパケット損失の傾向分析
現在、ネットワーク技術の応用で最も注目されているのは、マルチメディア通信である。これは、音楽、映像等の情報媒体とネットワーク技術とを組み合わせることで、新たな情報通信を実現しようというものである。その中でも、リアルタイム性を重視した音声・映像の同時配信の研究が進んでいる。ただし、これを実現するためには、インターネットにおいて避けることのできないパケット損失を回復するという課題について、考慮しなければならない。
パケット損失の回復手段には、再送によって損失回復を行うARQ (Automatic Repeat Request)の他、冗長パケットを付加して受信側で損失回復を行うFEC (Forward Error Correction)が提案されている。ARQは、Ack応答信号を利用して、損失パケットを再送によって回復する手段であり、インターネットではTCPに組み込まれて広く利用されている。ただし、先のリアルタイム転送を考慮した場合、RTT (Round Trip Time) による遅延の影響が無視できず、リアルタイム性を損なう可能性がある。よって、リアルタイム転送時の損失回復には、受信側のみで回復処理を行うためRTTによる遅延が殆ど無視できる、FECを用いるべきである。
FECを損失回復に適用するには、パラメータとして、処理ブロックの単位と冗長性を決定する必要がある。そのためには、処理ブロック内のパケット損失数を把握し、それに適応された冗長度を選択しなければならない。従来の研究では、損失傾向を推定するモデルとしてポアソン分布などの確率分布を用いてきたが、実際のネットワーク上におけるパケットの損失率は、必ずしも等確率ではなく、損失傾向のモデルとしてこれらの確率分布を用いることは適切とはいえない。これは、ネットワーク上でのパケットの損失傾向に、バースト性と呼ばれる特徴があるためである。
本研究では、従来の研究で用いられてきた確率分布と実際のネットワーク上での実測データとの比較を行って、実際のパケットの損失データに対してFECを適用させ、シミュレーションの結果から、最適な処理ブロック数と冗長度の推定を行った。その結果、パケット損失を回復させた後の実データの到着率を特定した際に、処理ブロック内のパケット数と冗長度をどのように設定すればその到着率を満足できるか、その具体的な数値をグラフ化することが可能であることが明らかになった。
修士 大里浩一 補助事象導入条件/事象ネット構成問題の解法
(亡くなられた西村教授の元での研究を完成させたものです) シミュレーションに基づく設計方法においては、設計者はあらかじめ設計すべきシステムの動作をペトリネットベースのモデルで記述しなければならない。しかし、システムが大規模で複雑になると、矛盾のないペトリネットモデルを作成すること自体難しくなる。
これに対して、ペトリネットを離散事象システムの設計に応用するもうひとつの考え方は、適当な形で与えられた仕様をもとに、システムモデルとしてのペトリネットそのものから設計をはじめようとするものである。しかし、ペトリネットの設計に関する研究は数も少なく、ペトリネットの動作表現法や問題の定式化すらまだ定まっておらず、技術者の経験と勘による設計が行われてきたのが現状である。
このような状況のなかで、ペトリネットのサブクラスである、すべてのプレースの容量を1に限った条件/事象ネット(Condition/Eventネット)の設計に関する試みがなされてきた。そこでは、“仕様を表す半語の組が与えられたとき、必要ならば仕様に含まれない事象を付加しながら、(付加した事象を無視したとき)仕様が表す動作だけを示す条件/事象ネットを求めよ。”という構成問題が考えられた。
本研究では、この構成問題に対し大別して次のような解法を提案する。
* 解を生成するようなネットを直接的に構成して行く解法
* 仕様に適合するネットをすべて列挙することによる解法
* 解が存在し得る範囲を限定することによる解法
* 仕様を分割することによって問題を単純化する解法
これらとその組み合わせを用いることで、補助事象が4つ程度まで必要となる仕様に関しては、特定のケースを除いて解を得ることができるようになった。
また、それらの解法は本研究で開発した計算機上で動作するシミュレータにインプリメントされているため、計算機に実際に構成問題の解を求めさせることにより、単に理論的に解が与えられるかどうかだけではなく、ある程度許容可能な時間内に解を得ることにも重点を置き、そのための効率化・高速化法も考案した。
最後に、本研究で求められた解法を用いて実システムに近い制御系の設計問題の解を求めることで、その有用性を示す。
駒津研二 IPv6に関する調査及び検証
本研究では、ネットワークに関する基礎知識を理解し、現在普及しているインターネットプロトコルであるIPv4に代わり今後普及することが予測される新しいプロトコルIPv6について検討する。特にIPv4からIPv6への変更点、移行するにあたっての手法、並存するための問題点の調査を行い、ファイル転送の実験を介してIPv6の動作に関する検証を行う。
高田竜太 MPEG-4動画配信におけるパケット損失の影響
今日xDSL等の広帯域通信サービスが広がりつつあり、それに伴い動画配信コンテンツの増加が予想される。しかし、インターネットのベストエフォート配送という性質から、回線が混雑すればパケットの損失が避けられない。配信する動画像の圧縮符号化形式としてMPEG-4の利用が考えられているが、MPEG-4の性質上パケットの損失の仕方によっては再生に対して大きなダメージを与えることが推測される。そこで本研究では実際にMPEG-4動画ストリームデータを作成し、インターネットのISDN64kbpsアクセス回線でのパケット損失状況を調査し、MPEG-4動画を配信した場合にパケット損失で失われるデータが動画再生に与える影響を検討する。
谷口夏行 情報賞味期限導入によるディスクスペース利用効率の向上
将来、大容量メディア通信が増えるのは必至である。かつては利用されていなっかった形態の通信手段も使われるようになるだろう。定期的な有料サービスの配信や、他のメディアからのデジタルへの移行があったりと、情報をデジタルで扱う機会は多くなる。そのなかでユーザのディスクスペース利用効率を向上させることは重要である。効率利用のためのアイデアとして、情報に「賞味期限」概念の導入を試みた。データの保存されている期間や使用された回数などで期限を設定し、情報のもつ価値や質を半減させることにより情報量を減少させるという考え方である。可逆・不可逆圧縮、削除、メディアの変換など、さまざまな手法を用いて適切な情報量への削減を可能にし、実用化することを目標とする。
山本廣那 ネットワークパケットにおけるFECの有効性の検証
今日、インターネットにおけるTCP/IPを用いたファイルなどの転送では、 パケット損失に対して再送という対処をせざるを得ない。しかし、動画や音声の配信を行った場合、TCP/IPを用いることは再送による遅延が発生してしまいデータのリアルタイム性が損なわれてしまう。そこで動画や音声を配信するにおいてはUDP/IPを用いるのであるが、UDPにはパケットの損失に対する対処法が実装されていない。そこで、ネットワークパケットに対し前方誤り訂正符号(FEC)を施し、損失パケットの回復を行う。本研究においては、誤り訂正符号としてリードソロモン符号を採用し、インターリーブ法を用いて損失パケットを回復する手法を検討する。それを実装したデータの送受信プログラムを作成し、FECの動作を検証する。